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店主ブログ
2026.09.07
先日、千葉県旭市のお客様から畳替えのご連絡をいただきました。
お名前を伺って、過去の記録をたどってみて驚きました。18年前に、当店で表替えをさせていただいたお宅だったのです。
18年という年月が経ってもなお、また当店を思い出してお電話をくださる。これは本当にありがたい事です。前回の工事のことを覚えていてくださったのだと思うと、今回もしっかりお応えしなければと、身が引き締まる思いでした。
今回のご依頼は、奥の旦那様の寝室と、二間続きのお座敷。3部屋合わせて20枚という、大きな畳替えのお仕事です。

お宅に伺って、まず3部屋の畳を一枚ずつ拝見しました。
すると、旦那様の寝室の畳が、他の部屋と比べてかなり傷んでおりました。畳床(たたみどこ・畳の土台部分)の痛みが大きく、ここまでくると表面を張り替えただけでは踏み心地は元に戻りません。
ここで少しご説明させてください。畳替えには大きく2つの工事があります。
表替えは畳床がしっかりしていることが前提の工事です。今回の寝室のように土台そのものが傷んでいると、いくら表面を新しくしても、歩いたときの沈み込みは残ってしまいます。
そこで旦那様の寝室6畳については、表替えではなく新畳をご提案いたしました。毎晩お休みになるお部屋です。せっかくなら寝心地そのものを良くして差し上げたい。そう考えてのご提案でした。
新畳をお作りするにあたって、畳床にはケナフマットボードをお選びいただきました。
ケナフというのは、アオイ科の一年草の植物です。この繊維をマット状に固めたものを畳床に使ったのが、ケナフマットボードです。

写真の断面を見ていただくと分かりやすいと思います。茶色い繊維の層で、白い板を挟み込んだつくりになっています。この層になった構造が、畳の踏み心地を生んでいます。
当店で新畳をご注文いただくお客様に、一番選ばれている畳床がこれなんです。理由ははっきりしていて、クッション性が高いこと。足を乗せたときの柔らかさが違います。
毎晩お休みになる寝室に敷く畳としては、これ以上ない選択だったと思います。
畳表(たたみおもて・表面のい草の部分)は、3部屋とも熊本県産の天然い草を使わせていただきました。お客様は迷うことなく熊本県産をお選びくださいました。

品種は熊本県奨励品種の「ひのはるか」。JAやつしろの認定証がつく、くまもとJAブランドの畳表です。
生産農家は吉田和功さん。畳表には、このように生産者の名前が入った出荷証明書がついてきます。産地も織り上げた場所も熊本県、表面加工は無着色。着色をしていないぶん、い草そのものの色と香りがそのまま残ります。
敷いてしまえば生産者の顔は見えません。それでも、どなたが作ったい草なのかがはっきり分かるものをお納めしたい。いつもそう考えております。

さて、今回のお仕事で一番印象に残ったのが、二間続きのお座敷の畳縁です。

古い畳を拝見したときのことです。18年分の日を浴びて飴色になった畳表に、黒い無地の縁がすっと通っておりました。18年前に当店で表替えをさせていただいたとき、お客様がお選びになった縁です。
そして今回、お客様がお選びになったのも、やはり大宮縁の黒の無地縁でした。
畳縁(たたみべり・畳のふちの部分)には、柄の入ったものと、柄のない無地のものがあります。無地の縁をお選びになるお客様は、たまにいらっしゃいます。ただ、その中でも黒の無地をお選びになるお客様は、本当に稀です。
18年前も黒、今回も黒。これはもう、こだわりという言葉がぴったりだと思います。

正直に申し上げますと、ご注文をいただいたとき、私は仕上がりを楽しみにしながらも少し緊張しておりました。黒はそれだけ主張のある色だからです。
ところが、実際に敷き込んでみて驚きました。
かなり渋みが増して、お部屋がぐっと締まったのです。

新しいい草の青々とした色合いに、黒い縁がすっと一本通る。柄がない分、線そのものが際立ちます。二間続きの広いお座敷ですから、その線が奥までまっすぐ伸びていく。落ち着きと格の両方が出た、見事な仕上がりになりました。

畳縁ひとつでお部屋の表情はここまで変わるのかと、職人の私のほうが勉強させていただきました。
旦那様の寝室のほうは、お座敷とは変えて、大宮縁の市座(いちざ)No.6をお選びいただきました。
紺と白の細かい市松柄の縁です。お座敷の黒一色に対して、こちらは白が入る分だけ明るく見えます。寝室は日中あまり日の入らないお部屋でしたので、縁で少し明るさを出して仕上げたい。そんな狙いのある一枚でした。

そして、3部屋20枚を納めさせていただいた日のことです。
畳を敷き終えて玄関を出るとき、家中がい草の香りに包まれておりました。
1部屋だけでも、もちろんい草は香ります。ただ、3部屋が同時に新しくなると、香りが家全体に回るのです。廊下も、玄関も、青いい草の香り。3部屋同時だからこその贅沢です。
後日お客様に伺うと、旦那様がこうおっしゃっていたそうです。
「い草の香りが気持ちよくてぐっすり眠れたよ」
畳床の痛みが大きかったので新畳をご提案しましたが、そのご提案がこういう形で返ってくると、本当に嬉しいものです。
クッション性の高いケナフマットボードの寝心地と、無着色のい草の香り。その両方が旦那様のよく眠れた夜につながったのだとしたら、畳屋としてこれ以上のことはありません。
18年ぶりにお声がけくださったお客様に、こうしてお喜びいただけた。何より嬉しい仕事になりました。
今回は千葉県旭市で、18年ぶりにご依頼をいただいたお客様の3部屋20枚の畳替えをさせていただきました。旦那様の寝室6畳は畳床の痛みが大きかったため、クッション性の高いケナフマットボードを使った新畳に。二間続きのお座敷8畳と6畳は表替えで、いずれも熊本県産「ひのはるか」、吉田和功さんの無着色の畳表を使わせていただきました。
畳縁は、寝室が大宮縁の市座No.6、紺と白の細かい市松柄で明るく。お座敷は18年前と同じ、お客様こだわりの黒の無地縁で。黒の無地は選ばれる方が本当に少ない縁ですが、仕上がってみると渋みが増して、お座敷が実に締まって見えました。
畳表の産地までは気にされる方が多いのですが、縁までじっくり選ばれる方は意外と少ないものです。けれども縁は、お部屋の印象を決める大きな要素です。同じい草の畳でも、縁が違えば別のお部屋のように見えます。畳を替えられる際は、ぜひ縁の見本もゆっくりご覧になってみてください。
そして、複数のお部屋をまとめて替えられると、家全体がい草の香りに包まれます。何部屋か気になっているお部屋があるようでしたら、一度にまとめてというのも一つの方法として知っていただければと思います。
畳や襖、障子のことで気になることがございましたら、千葉県旭市の小久保畳店までお気軽にご相談ください。
安心の畳の打ち直は厳選素材にこだわる国産専門の地域密着店へ
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