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店主ブログ
2023.09.04
畳の素材は?と問われた時、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか?
多くの方は「わら」「いぐさ」と答えるかと思います。
しかし、現在は化学素材を使った畳のシェア率が増え、稲わらの畳が特別なものとなってきています。
全国的にわらの入手が難しくなり、各事業者も頭を抱えている問題でもあります。
その背景には、どのような変化があるのか?、なぜ天然素材の畳が科学素材になりつつあるのか?
今回はこの内容について触れていきたいと思います。
稲わらの使い道は様々なものがあります。
しめ縄、土俵の俵、カツオの藁焼き、当店ではもちろん畳で使用します。
需要がある稲わらがなぜ手に入らなくなったのか、その理由は「長さ」にあります。
そもそも、畳を作るには80cmほどの長さが必要になります。
以前までは、コメ作り農家さんは手作業で稲刈りをし、束ねて乾燥をさせていました。
しかし、この作業は農家さんにとって、かなりの負担となります。
現在では機械化が進み、コンバインという稲刈り機が普及し、刈り取った稲を機械の中で脱穀し、残った稲わらは細かく刻まれ田んぼに撒かれるようになりました。
細かくなった稲わらは、肥料になったり、燃やして処分されるため、長い稲わらは残らなくなってしまったのです。
戦前までの一般的な住宅は、瓦屋根と和室のある「木造住宅」が主流でした。
通気性が高く、夏は涼しく、冬暖かく過ごせることが特徴です。
わらの畳も、「断熱」「調湿」「空気清浄」といった効果があるので、とても相性が良いです。
しかし、平成以降からは、温暖化などの影響もあり室内環境を快適に過ごせる作りに変わり、断熱性や気密性を重視するようになりました。
本来、畳の下は写真のように、荒板に僅かな隙間を作り、空気の循環をさせていたのですが、最近だと気密性を高めるため、こういった隙間がない住宅が多いです。
わらの畳には調湿効果があるのですが、空気の循環ができないと畳に湿気が溜まってしまいます。
湿気が溜まる=カビが生える=ダニが出る
このような状況になりやすいので、今ではわらを使わない「建材床」が増え続けております。
化学素材を使った畳は安く購入できるほか、稲わらの畳より軽く持ち運びやすいという利点もあり、シェアがかなり増えている状況です。
稲わらを買う業者が少なくなれば、農家側も稲わらを残さなくなり、畳の材料となる稲わらを確保しにくくなるという悪循環が起きます。
よって、稲わらの畳は、今では特別なものとなってしまいました。
今回は、農家さんにお願いして長い稲わらを取っておいていただきました。
当店で、畳床を作るわけではないのですが、畳の補修にもわらは使用します。
そのためには、長くて丈夫なわらを選別し、しっかりと天日干しする必要があります。
実際に作業をしてみると、昔の農家さんの苦労が身に染みて分かりました・・・
選別したわらを束ねて持ち帰りましたが、また何日か乾燥させる必要があります。
こういう手間があるからこそ、天然素材の畳には魅力がたくさんあるんだと思います。
稲わらは、工芸品や伝統行事などに使われて、日本の文化や生活と密接に関係しています。
しかし、農業従事者の高齢化も進み、負担を考えると、長い稲わらを残すことは簡単ではありません。
住まいに関しても、高断熱・高気密などの住宅性能の向上により、畳も天然素材を使用しない建材床や和紙表のシェア率が増え、稲わらの畳は減り続けるでしょう。
今、わらの畳をたくさん作ったとしても、それに合う住宅がなければ意味がありません。
これから伝統的な畳が増えることはないと思っています。
なので、せめて今、稲わらの畳をお使いの方は、大切に扱ってください。
地域にもよりますが、全国的に見たら貴重な畳です。特に国産の畳は。
少しでも畳の魅力や価値がみなさんに伝わってくれたら、私たちも職人冥利に尽きます。
これからも頑張って畳を作っていきますので、応援の程よろしくお願い致します。
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